今日、足りなかったケールを買いにスーパーへ行ったら、ばったりイアンに会いました。イアンは大工で、10年前に我が家のキッチンの改装を手掛けてもらいました。
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その当時、私たち夫婦は、今の家に引っ越してきた直後。ダイニングルームとキッチンは壁を挟んで隣り合っていたのですが、この壁をぶち抜いてキッチンダイナーにする予定でした。キッチンキャビネットなどもすべて総入れ替えするという、私たちにすればけっこう大掛かりな工事です。
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日本だと、大きな工務店がいくつもあると思うのですが、イギリスだと、個人業の一匹狼の大工が多く、腕の良い信頼できる大工さんを選ぶのがとても大事です。いいかげんな工事をされて、完成したものの、水漏れとか電気の接続不良とかが出てきて、泣きを見たという話をよく聞きます。

なので、私たち夫婦も、どの大工さんに依頼するか決めるために、評判から3人の大工さんを選び、それぞれ我が家に来てもらって話を聞き、見積りをしてもらいました。
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イアンにも、見積りに来てもらったのですが、ここで、イアンの第一印象は「ものすごく悪かった」んですね。

その日、雨で靴が濡れているにもかかわらず、我が家に土足でズカズカ。これで、もう目が点に。イギリスは土足がデフォルトだけど、最近は「靴を脱ぐ」のがデフォルトの家も増えています。

イギリス風ヤンキーで、おしゃべり好きなチャライおじさん(当時、40代前半)というのが、イアンの第一印象でした。この人に依頼したくないな~と思ったのですが、やっぱり「腕が良い」のが一番大事かと、評判が一番良かったイアンに工事をお願いすることに決定。
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夫は、平日は往復3時間かけて通勤するので、イアンが工事している間、私がずっとイアンに対応しないといけません。3時間おきに飲み物・お菓子を出したり。これが6週間ぐらい続きます。

イアンは、工事期間中は、大型ラジオを持ち込んで、音楽に合わせて大声て歌いながら、壁をハンマーでぶち抜いたり、床を作ったり、キャビネットを取り付けたり。歌声も工事の音も、もう大音響です。

最初は、うるさいな~、お茶出しのときに話すのめんどくさいな~、と思って、気が重かったのですが、少しずつ話をしていたら、悪い人じゃないんですね。チャライけど、誠実でとてもストレート。おしゃべりで陽気なのも、客商売ゆえのコミュニケーションなのでしょう。

もともとの電気系統に問題が見つかって、夫と私が「もはや、これまでか」と真っ青になったときも、「Don't Worry」(心配しないで)と、きっちり解決してくれました。このときの「Don't Worry」という言葉は、涙が出るほど嬉しかったものです。
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人間って、ジャッジメンタルになりがちだけど、ふとした瞬間に、その人の「ひととなり」を感じて、「苦手」が「親しみ」に変わるときがあるんですね。これまで何度か、経験したけど、その瞬間、空気の質がフッと変わるように感じます。

私は、第一印象を良くしようと思うあまりに、初対面の人には「自分」を出せずに「いい人ぶって」しまいがちです。そうすると、ある程度は仲良くなれるけれど、それ以上は親しくなれないんですね。いろいろと考えさせられます。


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